■『時刻表』と乗換検索の強みを知ろう

 『時刻表』といえば、西村京太郎氏をはじめとするトラベルミステリーを思い出す人も多いだろう。紙の『時刻表』があれば、列車どうしの追い抜きや接続、途中経路などもひと目でわかるので、実用面だけでなく物語の世界にでも応用できる。検索アプリではトリックを考えるのは難しいが、紙の『時刻表』があればこそミステリーも成り立つのである。

 乗換検索は、どこにいても自分の乗る列車や経路が、本数が多い都市部の電車や私鉄・地下鉄に至るまで瞬時に提示されるのが最大の利点。一方「一覧性」と「保存性」、この二つが『時刻表』の持つ大きな利点である。そして、このことこそが今後も紙の『時刻表』が生き残っていく絶対的な「強み」であるといえるのである。それぞれの強みを知ることは、有効な時間の使い方や、移動の疲れを軽減するのにも貢献するはずだ。(文・木村嘉男)

木村嘉男/元『JTB時刻表』編集長。JTBパブリッシングを定年退職し、現在はフリーのライター・編集者として鉄道関係の執筆や講演活動などを行っている。