物語の舞台と共に、共演者が変わることも大きかったですね。相手に引っ張ってもらうことで、葵の気持ちも、私自身の気持ちも自然と変化していった気がします。

 出来上がった作品を見たとき、何をもって幸せと感じるかは一人一人違う、ということを改めて感じました。恋人と過ごせるだけで幸せを感じる人もいれば、海外に出て成功することで喜びを感じる人もいる。色々な幸せの形を教えてもらいました。

 モデルとして活躍していた小松が本格的に俳優デビューしたのは18歳のとき。映画「渇き。」(2014年)で、美しいが邪悪な一面を持つ女子高生役を演じ、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。以来、約20本の映画に出演してきた。
 激しい感情を内に秘めた役も、爽やかな青春映画のヒロインも、どの作品でも強い印象を残している。

小松:現場では毎回新鮮な気持ちで臨んでいて、一つ作品を終えるたびに大きな達成感を覚えます。これまで演じてきた役とはまったく違う役をいただくと、ワクワクしますね。純粋に「楽しもう」という気持ちになります。どの役柄も同じように見えてしまうのはいやだし、作品に参加させていただく以上、何か爪痕のようなものを残したいんです。映画は短期集中で撮影が行われることが多いので、一つの役に慣れすぎることがないのもいいのかな。

 演じていると、目の前にいる役者さんが、物語のなかの人物にしか見えなくなる瞬間があるんです。背景や空気感……なにもかもがピタッとそろって、シーンを作り上げてくれる。

 ロケの場合、たとえばそこに大きな石があったら座ってみようか、とか。状況に応じて、撮れるものも見えてくるものも変わってくる。そんな瞬間は何度経験しても鳥肌が立ちます。やっぱり映画が好きだな、やめられないな、と思いますね。

 俳優としてのキャリアを着実に積み重ねる。そのなかで、脚本の読み方にも変化が出てきたという。

小松:脚本を読んでいるときの温度感みたいなものは、確実に変わりました。頭をフル回転させながら、より深いところまで想像を膨らませることができるようになった気がします。

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