タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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もうコロナに疲れた……という人、結構いるのでは? 目に入る情報は全てコロナ、知人との話題もコロナ。先が見えない不安に加えて、収入が激減したり、健康リスクにさらされたりするのですから、気持ちが休まることがありません。今、不安でないという人は、ごく一部の長期完全籠城できる富裕層だけかもしれません。
非常時には多くの人が心のケアを必要とします。でも、厚生労働省や東京都のwebサイトのトップには、メンタルケアのサポートについて目につく表示がありません。今はお金や体調やメンタルなど、いくつもの不安を抱えてサイトを訪れる人が多いのですから、「お金の不安」「健康の不安」「心の不安」と三つのボタンを作って、クリックして質問に答えていくと必要な情報や支援にたどり着けるような仕組みがあるといいのではないでしょうか。
厚労省では平日の18時から21時30分までと土日祝日の14時から21時30分まで、チャットで「心の相談」を受け付けています。私も試しに使ってみましたが、相談者の気持ちに寄り添う姿勢が感じられました。それだけでも不安を感じている人にとっては助けになります。ただ、同時に適切な情報にたどり着けるようにガイドする機能も必要だと思いました。
不安は漠然としていればいるほど大きくなるもの。何が不安かも把握できないまま、膨大な項目の羅列の中から自分が知りたい情報を探し出すのは至難の業です。心の相談チャットや見やすいチャートを入り口に、不安の正体を知り、今使える制度など、具体的な情報を得ることができれば安心します。
不安の感染者は、ウイルスの感染者以上に多いはずです。外出自粛が長引けば、メンタル面で追い詰められる人も増えます。心のケアの充実が急務です。
※AERA 2020年4月20日号