だが、ポカリスエットはそれら“常道”とは一線を画し、発売以来、不変であることを強みにしている。

「サブブランドを乱発すると、明確なコンセプトを持っていてもブレが出てきがち。ポカリスエットは、2013年4月にカロリーオフのイオン飲料・ポカリスエット イオンウォーターをリリースしていますが、こちらのコンセプトは『汗をかいていない日常を快適に過ごすための水分補給用飲料として、機能性と飲み心地にこだわった』。ポカリスエットよりさらに甘さを控え、後味がスッキリ。仕事中を含めた日常のあらゆるシーンを想定しており、両者のすみ分けをはっきりとさせています」(本吉さん)

■発想から7年間 試作品1千以上

 大塚製薬では65年発売のオロナミンCもまた、同様のマーケティングで売り上げを伸ばし、ロングセラー商品の仲間入りを果たしている。

 なぜ、これほどまで頑固一徹に商品コンセプトを変えないのか? 同社ニュートラシューティカルズ事業部製品部の担当者、ポカリスエットプロダクトマーケティングマネージャーの原康太郎さんはこう話す。

「お客様からも同様の質問をよくいただきます。でも答えは一つ。『徹底的に汗の成分を分析し、失われた水分と電解質をいかに速やかに血液中に補給するか』を追求した最終商品なので変える必要がないんです」

 あえて“最終”というのには理由がある。製品化にあたっては時間と資金を惜しまず、徹底的に最高品質を追求した自負があるからだ。

「発想から発売まで7年。試作品だけで1千種以上作り、研究に研究を重ねました。さらに机上の理論値ではなく専門研究所で臨床試験を行い、科学的・医学的な裏付けを取って効能のみならず安全性も確認しているのです」(原さん)

 84年には当時日本で初めての民間臨床運動栄養研究所である佐賀栄養製品研究所(佐賀県吉野ケ里町)を設立。健康上の問題に応える様々な研究を行い、成果をベースに革新的新製品の開発、また水分・栄養摂取の研究を行ってきた。

 また01年に、飛行機などでの長時間座位に伴って発症する「旅行者血栓症(エコノミークラス症候群)」を防ぐための適切な水分補給を調査。成田空港から9時間のフライトの米国・モーゼスレイク(ワシントン州)の空港まで飛行機をチャーターし、参加した40人のデータを取って水分バランスと下肢の血液粘度に与える影響について分析した。

「飛行中、被験者を水群とイオン飲料群に分け、尿の総排出量や血漿(けっしょう)量を計測。旅行者血栓症の原因となる血液粘度などを調べました。その結果、水群と比べてイオン飲料群のほうが血液粘度は上昇しづらいことがわかりました」(同)

 こんなエビデンス重視のPR活動が、医療関係者からも圧倒的な支持を得て、発熱したり熱中症になったりした際に受診するとポカリスエットが薦められる要因となっているのである。

 また、風味のバラエティー化ではなく、容量や摂取のスタイル、形状を増やし、消費者の選択肢を広げているのも見逃せない。

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