
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東京消防庁では、心肺蘇生を望まない傷病者への対応方針を定め、一定の要件を満たした場合に救急隊による心肺蘇生と搬送を中止することが2019年12月から可能になっています。自宅での最期を希望している高齢者の容態が急変した場合、119番ではなく、かかりつけ医に電話すればいいのですが、そのとき慌てずに医師に連絡することができるのでしょうか。
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例えば、自宅で療養中の配偶者や親が、夕方に水を少し飲み、おかゆも少し食べたので、あなたは安心して就寝しました。ところが目が覚めて様子を見ると、息をしていないのを発見します。このとき、あなたは、落ち着いて対応することができそうでしょうか。
東京消防庁の対応方針について検討する専門部会の委員を務め、高齢者の訪問診療などに携わる西田医院院長の西田伸一医師は、こう話します。
「多くの人は、『息が止まっている! 昨日まで元気だったのに! どうしよう』と気が動転して、119番通報してしまうでしょう。1970年代以降、日本では病院で亡くなるのが当たり前になり、人の死に慣れていませんから、慌てることを前提として考えておいたほうがいいでしょう」
119番通報したあと、「そうだ! (本人は)心肺蘇生を希望していなかった」と思い出したら、すぐにかかりつけ医に電話する、すでに救急隊が心肺蘇生を始めていても、その旨を告げて、すぐかかりつけ医に電話する、そしてかかりつけ医から救急隊に指示を出してもらいます。
このように対応してもらうためには、近所に看取りをしてくれる、かかりつけ医を事前に見つけておかなければなりません。
「通院している人は、その医師に将来自分が通院できなくなったら訪問診療をしてもらいたい、そして最終的には自宅での看取りをしてもらいたいと相談しておきましょう」
と、西田医師はアドバイスします。在宅療養支援診療所の登録をしていないクリニックでも、医師であれば誰でも訪問診療を行うことは可能です。