今春のキャンプで打撃練習するヤクルトの山田哲人(C)朝日新聞社
今春のキャンプで打撃練習するヤクルトの山田哲人(C)朝日新聞社
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 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、プロ野球は開幕する見通しが全く立っていない。4月17日の12球団代表者会議で、5月開幕の断念と交流戦中止、143試合だったレギュラーシーズンの試合数削減を決めた。

 開幕が大幅に遅れると、色々な問題が生じる。その一つが「フリーエージェント(FA)権」だ。

 国内FA権は8シーズン、海外FA権は9年が取得条件。1軍出場登録日数が145日を満たせば、1シーズンとしてカウントされる。プロ野球のシーズン開幕は例年3月末で、開催期間は9、10月までの約半年間。大きな故障がなければ、主力選手は1軍出場登録日数が145日を超える計算だ。

 だが、今年は状況が異なる。試合数が大幅に削減されれば、国内FA権取得の145日を満たさずにシーズンを終える可能性も十分に考えられる。その時に日本野球機構(NPB)は救済措置を取るのだろうか。野球人生は長くない。球界関係者からは、こんな同情の声が上がる。

「今年FA権を取得する予定の選手はかわいそう」

 今オフのFAの目玉として注目されているのが、ヤクルト・山田哲人(27)だ。打率3割、30本塁打、30盗塁の「トリプルスリー」を3度達成と、前人未到の記録を打ち立てた実績の持ち主。巨人ソフトバンクなど複数球団が獲得に乗り出すとみられている。

 だが、開幕が大幅に遅れて開催期間が145日未満となれば、今季中の国内FA権取得は不可能になる。

 もし、特例措置で1シーズンと認めても、FA権を獲得した選手たちは権利を行使することに複雑な気持ちになるだろう。FA権を行使して他球団に移籍したある選手は、こう分析する。

「FAは大きなエネルギーを使います。裏切り者だってたたかれるし、移籍した初年度は重圧をすごく感じました。今年は野球ができるのかもわからないという状況。その中でFAを(特例で)認められても、なかなか踏み切れないと思う。残留して来年1年間プレーして残留か、移籍かを決断する選手が多いんじゃないでしょうか」

 FA権を取得する選手たちは各球団の主力ばかり。今後の動向が注目される。(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事