従って、淡々と積立投資を続けることが第一という。では、どうすれば動揺することなく続けることができるのか。
実は冒頭のセロンさんが揺れる心の落ち着きを取り戻せたのは、長期投資を始める前に作っていた「投資方針書」を改めて読み返したからだ。
「その他の投資が全て失敗しても老後を安心して暮らせることが目的」「原則として投資信託を用いる」「65歳時点での目標資産額6千万円」……。投資目的や投資期間、目標金額などが書かれた方針書を見ていると、投資を始めたときの気持ちが思い出されてきた。
「それで、ぶれないで長期投資を続けようという決意が固まっていったんです」(セロンさん)
先の竹川さんは、こうしたセロンさんの行動を評価する。
「普通の人は仕事や子育てなどで忙しく、マーケットを見て機敏に動くことができないし、その必要もありません。淡々と積立投資を続けマーケットが荒れても動じないしくみづくりが大事になります。投資方針書があると、迷ったときに返るべき原点がわかります。読み返すことで解約へ動く心を抑えることもできます。とにかく感情で判断すると間違えることが多い」
とはいえ、自分の気持ちを文書化している人は多くはいまい。
竹川さんによると、心を落ち着かせる方法はほかにもいろいろあるという。
「長期投資について書かれた本を読み返してもいいし、右肩上がりになっている世界株の長期間のチャートを眺めてもいい。そして、投資しているのは価格ではなく、実体のある企業の価値なんだということを思い出してほしい」
心が落ち着いたら「コロナ後」へ思いをはせるのがいいようだ。先のセゾン投信の中野社長は「未来を想像する力」を強調する。
「コロナ騒ぎが終わった後の社会を思い描ける胆力があるかどうかが大事だと思います。このままずっとコロナウイルスに苦しみ続けると思うのなら、投資はやめたほうがいい。でも、そんなことを思っている人はだれもいません。騒ぎが収まって経済活動が元に戻ったときの姿を想像できれば、V字回復が期待できるでしょう」