「当社はほぼお任せで資産運用ができるのがウリで、20代から50代の働く世代がお客さまの9割を占めています。時々『このまま続けて大丈夫か』という問い合わせは入りますが、解約が多いかというとそんなことはありません」(広報担当者)

 一方で、ネット証券は活況を呈している。SBI証券楽天証券は新規口座の開設件数が月間で10万を突破、とりわけ両証券とも積立設定が増えているといい、「つみたてNISA」などを使った長期投資をめざす動きが加速しているとも受け取れる。

 コロナ騒ぎで外出を避けたいためか、ネット証券に向かう中高年も出てきている。定年後のお金対策に詳しいフィデリティ証券によると、

「対面型の証券会社で取引なさっている中高年の問い合わせが増えています」

 とのことだ。

 取材結果を総合すると、今のところ個人投資家が一斉に解約に走ったりする動きはないようだ。

 しかし積立投資で言うと、始めてからの期間が短い投資家ほど評価損益がマイナスに転じているはずだ。日経平均は昨年末比で約2割下がったが、その程度の下げは許容範囲ということなのか。

 問題はこの先のマーケットに対する心構えだろう。コロナ騒ぎは一向に終息する気配がないからだ。むしろ企業業績など実体経済への影響が判明していくのはこれからで、長引けば長引くほどマイナスの影響が大きくなる。つまり、マーケットがさらに下落し、二番底、三番底へ向かう可能性が十分考えられるのだ。

 さて、そんなマーケットに長期投資家はどう向き合っていけばいいのか。

 長年、コツコツ投資を実践し、勧めてきたファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子さんは、マーケットに居続けることが大切と強調する。

「長期投資は文字どおり、長い期間をかけてリターンをとっていく投資法です。途中でやめてしまうと、その後の相場上昇の恩恵を受けることができなくなります。例えば企業年金連合会の『平成29年度決算 企業年金実態調査』によると、企業型の確定拠出年金の加入者全体の通算運用利回りが年率2.8%なのに一部マイナスの人がいる。なぜかというと、せっかく投資信託で運用していたのに、基準価額が下がって評価損益がマイナスになったときに投信を解約して定期預金に預け替えてしまったからなんです」

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