それ以降、昭恵氏は頻繁に高坂さんのバーに通うようになった。もちろん、昭恵氏にとっては「アウェー」の店だ。
「首相夫人という立場でしたが、仲良くできた。『晋三氏は一番嫌いな政治家だ』と面と向かって言いましたが、動じることはなかったですね」
昭恵氏はグラスを傾けながら、高坂さんにいろいろな話をしたという。夫である安倍晋三首相や政権を批判する意見にも耳を傾けた。昭恵氏のこうした姿勢は「第1次安倍内閣が下野した後の、立教大学(社会人が対象の大学院)への進学が大きかったのでは」と高坂さんは話す。
「それまでは保守の夫と同じ考えを持って、違和感を覚えることなく過ごしていたようです。しかし、リベラルな気質が強い立教大学で学び直したことで、自分と真逆の考えの人たちと出会った。『素晴らしい人たちとの出会いに恵まれた』と言っていました。これを機に、主義主張やイデオロギーの垣根をなくして、いろいろな人と広くかかわるようになったようです」
今や昭恵氏のライフワークとなっている地方での米作りも、高坂さんが過去にレクチャーしたものだという。12年に昭恵氏が居酒屋「UZU」を立ち上げた際にも相談されたといい、昭恵氏は高坂さんに強い信頼を寄せていたようだ。
ところが17年、2人の友情を破綻させる出来事が起きた。昭恵氏の関与が疑われた森友学園問題(国有地売却をめぐる巨額値引き問題)だ。
「今までは店内で昭恵さんに批判が集中しても、夫がやっていることだからと切り離すことができましたが、森友問題は昭恵さんも当事者でしょう。鬱になった人もいるし、自殺者まで出ている。昭恵さんに悪気はないと思いますが、結果的にたくさんの善良な官僚を追い込んで、傷つけたわけです。昭恵さんに対しても今までのように許容はできないと思いました」