石井さんのおすすめは、動作をゆっくり行うスロートレーニング(スロトレ)。体への負担が少ないため日頃運動していない人でも安心して行える上、高い効果が期待できる。

 石井さんが教えてくれたのは、スクワット、プッシュアップ、ニートゥーチェスト。この三つでほぼ全身をカバーできるという。

「全身の筋肉をバランスよく鍛えるのが一番ですが、もし一つだけやるならスクワットがおすすめです。運動量が落ちると、太ももやお尻の筋量が落ちやすい。どちらも大きな筋肉のため衰えると代謝が落ち、太りやすくなります」(石井さん)

 いずれも一つの動作を4秒かけてゆっくり行うのと同時に、肘や膝を完全に伸ばさないのがポイントだ。

 たとえば普通のスクワットでは、しゃがんだ後に膝を伸ばして立ち上がる。だが、スロトレでは膝を伸ばしきらないことで、筋肉の緊張を保ち続けたままトレーニングすることができる。

「負荷は自分の体重だけですが、筋肉の血液が制限されて酸素不足になることで、筋肉は高い負荷がかけられたと勘違いします。これにより、通常の筋トレより軽い負荷と少ない回数で鍛えることが可能になります」(同)

 トレーニングのタイミングは、寝起きを避ければいつでもいいという。ただし、やる時間を決めたほうが習慣化しやすい。

 ハーバード大学・ソルボンヌ大学医学部客員教授で医師の根来(ねごろ)秀行さん(52)は、普段の臨床、教育、研究活動のほか、在宅勤務を実施する企業に対し、社員の健康維持やモチベーションアップのためのアドバイスを行っている。

「都内のIT企業から、在宅勤務中、昼過ぎまで寝てしまう社員もいると相談がありました。自粛でストレスがたまると交感神経が活発になって寝つきが悪くなりますが、呼吸法を変えるだけで不安やストレスを鎮めることができます」

 我々が普段意識するのは肺呼吸だが、それによって取り込まれた酸素は赤血球により全身に運ばれる。更に毛細血管を介して全身の細胞に届けられ、「細胞呼吸」が行われている。

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