【2】「あいづち」はうたない

 とても失礼に思えるが、オンライン会議では、同時に発話すると一方の声が聞こえなくなることがある。だから相手が話しているときは、黙っているのがルールなのだ。だが、聞きっぱなしは失礼。必要なのは、無言かつ必死でうなづくことだ。多少オーバーリアクション気味でいい。

 自宅から参加できることもあり、なんだか「気軽」なイメージだったオンライン会議だが、意外に気苦労も多そうだ……。だが、津田さん曰く「それは当然」だと言う。

「オンライン会議の場合、五感のうち、視覚と聴覚しか使えなくなる。残りが休憩しているぶん、2つの感覚をフル稼働させて、”あなたの話を聞いている””あなたの意見に賛成”と、一生懸命に伝える必要があるんです」

 なるほど、必要以上に「必死な」コミュニケーションが必要らしい。

 そのうえで、もうひとつ気をつけたいことがある。

【3】「どう思う?」とたずねる

 リアルな会議は、たとえば10人参加しても3人しか話さないなど、一部の人しか意見を言わないケースもある。また残り7人も、その場にいるだけで、なんとなく参加した気分になる。

 だが、オンライン会議はリアルな場ではないから、意見を発しないと「参加者」になれない。結果、疎外感も生まれてしまう。だから津田さんは、自分の意見を述べたあとには「僕はこう思うけど、佐藤さんはどう思う?」など、あえて名指しで問いかけ、参加を促すという。

「オンライン会議は”空気”が感じられないぶん、相手の気持ちを想像し、発言の余裕をつくるなどの工夫も必要なんです」

 なるほど、よくある「報告ベース」の会議では必要なかった気遣いが必要なのだ。

 津田さんの運営するコワーキングスペースでは先日、新たな取組みを始めた。新型コロナの影響で会えない仲間との議題のないオンライン会話「Morning Breakfast」だ。週1回、朝8時半から30分だけ近況報告をしあう、いわば、他愛もない場だ。

 一般的に「会議には明確な議題が必要」と言われているため、真逆の取り組みだが、津田さんは価値を感じている。

「会社にいると、お昼休みの何気ない会話で相手の体調や心理状態がわかる。でも在宅勤務だとそれが見えず、オンラインでの議論もうわべだけになりがちなんです。結局、いい議論には、いい関係性が必要だと気づきました」

 コミュニケーションスタイルが変わることで、信頼のつくりかたも変わりそうだ。