誰にもみとられずに死ぬ時代が到来しつつある。超高齢社会を迎え、周囲とのつながりを断つ人が目立ち始めている。新型コロナウイルス感染拡大を受け、国は一人暮らしの高齢者への見守り活動に力を入れるが、抜本的な対策はこれからだ。
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「人が亡くなると、ウジ虫が湧き、異臭が発生します。ウジ虫がハエに成長して窓や障子に張り付いていることもありますけど、さすがに3年も経つと乾燥して臭いもなくなっていました。3年ということは、それ以前から周囲の人はその人がそこにいることを知らなかったということでしょう」
孤独死した人などが残した荷物を整理する遺品整理専門会社「キーパーズ」(東京都大田区)の吉田太一代表は、死後3年経過して発見された人の部屋の様子を、そう振り返る。
見つかったときは一人でも、社会とつながりがあった人は少なくない。それでも、年間2千件の依頼のうち、3割は周囲から孤立した人だった。部屋が散らかっていたり、人に見られて恥ずかしいだろう物が出てきたり。室内に人を招き入れてこなかった様子がうかがえたという。
孤独死が社会問題化して久しい。しかし、全国一律の定義も全国的な統計もない。そのなかで、東京都監察医務院がまとめた統計が参考になる。2018年に東京23区での「孤独死(異常死の内、自宅で亡くなった一人暮らしの人)」の数は、5513人(男3845人、女1668人)だった。増加傾向にあり、男性は50~70代で増え、女性は年齢と共に数字が上がるという。
民間調査機関のニッセイ基礎研究所が11年にまとめた推計もある。
自宅で死亡し、死後2日以上経って見つかる高齢者は全国で年間2万6821人(男1万6617人、女1万205人)。死後4日以上の場合だと、年間1万5603人(男1万622人、女4981人)だった。
淑徳大学の結城康博教授(社会福祉学)は言う。
「2、3日で発見された場合、気付いた人がいたわけだから、孤独ではなかったかもしれません。ただ、4日以上経過すると、腐敗が始まることから公衆衛生上の問題が発生し、より社会に与える影響も大きくなっていくのです」