都内で派遣社員として働く40代女性は、派遣先のメーカー社員にアシスタントとしてついている。が、その人はすでにリモート勤務で自宅にいる。自分だけが9時から17時半まで毎日出社して仕事を続けている。
「ネットワークの権限が渡せないから在宅にできない」と言われた。だが、部署によっては派遣でもテレワークに切り替えられたところもある。仕事の内容は在宅でも問題なく進められるだけに、納得がいかない。
「同じ仕事をしている“社員”はテレワークになり安全に過ごしていて、かつ、お給料にも影響がなく生活している。同じ仕事をしている“派遣社員”はテレワーク稼働を否定され危険をおかして毎朝電車に乗って通勤。あまりにも派遣社員の命や健康が軽んじられているのでは」
女性は、派遣社員の危機管理・リスクマネジメントの責任がどこにあるのか周知徹底されていないことが問題だと指摘する。
「派遣って、“今ここにある仕事をこなしてくれればいい人”のカテゴリーなんです。だから、何かあったときのことまで考えられていない」
と、怒りを露わにする。
憤りを生み出しているのは、職場の「分断」だ。誰かが在宅勤務ができるのは、他の誰かが出社してくれているから。全ての人が在宅で勤務できる環境が整っていない以上、その状況を理解して互いに少しでも支え合うことが必要だが、出社させられる側にしてみたら、それでも「やり切れなさ」は拭えない。(編集部・高橋有紀)
※AERA 2020年4月27日号より抜粋
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