「なぜこの路線区は駅数が多いのか、あるいは少ないのか。なぜこういう時間間隔になっているのか。時刻表を見ていると、その地域が置かれている社会的背景が見えてきます」

 たとえば、朝5時台に始発列車が出た後、次は9時台というローカル線がある。この沿線では途中で乗ってくる高校生などがいないのではないか、となると車に乗れないような高齢者の利用しかなくて、もしかすると廃線も近いのでは……。そんな妄想ができるという。

■「川の時刻表」が人気

 そうした中、一風変わった時刻表が人気だ。列車が駅ではなく、川と交差する時刻を示した、その名も「川の時刻表」。

「広報担当の地域連携課の職員3人で着手し、約半年かけて作成しました」

 と話すのは、「川の時刻表」を作成した、国土交通省徳島河川国道事務所地域連携課の宮地正彦課長。車窓からの四季折々の風景を眺め、川の魅力を再発見してもらおうと昨年、JR四国の協力のもと作成したという。

 時刻表がカバーするのは、主に徳島県内を流れる吉野川水系の本流と支流計34本にかかる48カ所の橋。高徳線、徳島線、鳴門線、土讃線など、JR四国の5路線がこの流域を走る。

 時刻表は、縦に川の名前、横に列車名が入る。

「川の位置や川の名前を知ってもらい、河川に関心を持ってほしい」

 と宮地課長。時刻表は、徳島河川国道事務所のホームページから入手可能だ。

 新型コロナウイルスの影響で、ゴールデンウィークに旅行を控えるという人は少なくないだろう。そんな人は、時刻表で「妄想の旅」に出てはいかが。

 冒頭で紹介した鈴木さんの一押しは、「日本三名泉を巡る3泊4日の旅」。兵庫県の有馬温泉、岐阜県の下呂温泉、群馬県の草津温泉──この「日本三名泉」を新幹線や路線バス、さらに今年デビューした近鉄の豪華な新型特急「ひのとり」や、特急ワイドビュー「ひだ」などで巡るのだ。鈴木さんは言う。

「温泉街を散策し、地元の名物を味わう。そして1日に1回は名物の駅弁も買い求め、車窓もおかずに舌鼓を打ちます。三名泉の想い出とともに、きっと忘れられない旅になります」

(編集部・野村昌二)

AERA 2020年5月4日-11日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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