西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマはコロナ騒ぎで注目される「BCG」。
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【ポイント】
(1)コロナ騒ぎのなかでBCGが注目されている
(2)BCGはがん治療でも期待されたことがある
(3)BCG接種を「お守り」にするのは悪くないのでは
コロナ騒ぎのなかでBCGに注目が集まるようになってきました。本誌4月17日号でも記事にしていますが、BCGの接種が新型コロナウイルスの感染予防につながるのではないかという見方があるのです。
人口100万人当たりの死者数の推移が、イタリアやスペイン、フランスなど欧州諸国と米国の傾きは急なのに対して、日本や韓国、中国は緩やかです。中国は死者数の多さが注目されましたが、実は人口当たりの推移は緩やかで、現在は落ち着いています。この違いは、結核を予防するためにBCGを接種している国と、接種していない国の違いではないかというのです。
欧州諸国や米国ではすでに結核感染の心配がなくなったとして、BCGを接種しなくなっています。日本では、昔はツベルクリン反応という検査で「陰性」だと接種していました。私などには懐かしい思い出です。現在では、生後1歳未満の赤ちゃんを対象に接種が義務付けられています。
このBCGは、私が専門のがん診療でも注目されたことがあります。その経緯は『新・現代免疫物語「抗体医薬」と「自然免疫」の驚異』(岸本忠三・中嶋彰著、講談社ブルーバックス)に詳しいのですが、1970年から80年にかけて、世界の研究者がBCGに熱い視線を送りました。「がんのBCG療法」が台頭したのです。結核患者はがんになりにくいという話が始まりです。結核菌は、がんに対する抵抗力をもたらすらしいという見当で、競って研究に乗り出したのです。