流通する「廃棄する一歩手前の青果物」

 そもそも、中央卸売市場に中国系を含む外資の業者が参入する例はあるのだろうか。

 次にヒアリングをしたのは横浜中央卸売市場である。電話に出た担当者は次のように話してくれた。

 「確かに近年は中国系の売買参加者が増えています。魚市場では太刀魚、青果物市場では長イモ、また赤色を好むのか、赤い魚や野菜を買う傾向があります」

 この回答が示すのは、きちんと“正攻法”で生鮮品を仕入れている中国系業者もいるということだ。ところが、この担当者の話からは「そうではないケース」も存在することがわかった。

「さすがにゴミを捨てる場所から青果物を拾っていくことはありませんが、“廃棄する一歩手前の物”を持って行ってしまうケースはゼロではないのです」

新たな流通はSDGsにもかなう

「廃棄する一歩手前の物」とは、一体どのような状態の青果物なのだろうか。この担当者によれば、「日本の仕入れ業者は『いい物しか買わない』という傾向にあり、鮮度はよくても形や色が悪いような商品は、どうしても残って廃棄処分になってしまいます」ということだった。

 確かに、私たち日本人は“見た目がきれいで質の高い物”を好む。だから、ちょっとしたキズがあったり不ぞろいだったりという規格外の青果物は、市場では「廃棄する一歩手前」にせざるを得ない。とはいえ、それは決して食べられないものではない。

 こうしたところに生まれたのが、中国系やアジア系の資本による“ニュービジネス”というわけだ。見た目が悪いものでも、多少鮮度が落ちているものでも「安く大量に売ればトータルとして儲かる」という発想と行動が、新たな流通を生み出しているともいえる。

 これまで見向きもされなかった「余りもの」を流通させることの意義は決して小さくない。横浜中央卸売市場の担当者は、「残った物や余り気味のものを廃棄処分にするよりも、このように流通させてもらえれば、SDGsにもかなうのではないでしょうか」と、前向きに捉えていた。

 ちなみに横浜市では、キズがある、脂が足りないなどの理由で規格外となった魚を給食のメニューに取り入れるなど、未利用魚の活用に力を入れている。

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筆者が受けた「中国系店舗の意外な対応」とは?