伊沢拓司さん(撮影:写真部・松永卓也)
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QuizKnockの課外授業シリーズ01『勉強が楽しくなっちゃう本』QuizKnock 著/1200円+税※本の詳細はこちらをクリック
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 新型コロナウイルスの感染拡大で小中高校、大学での「休校措置」や「リモート授業」が続いています。「学ぶ権利」が失われたかのように思える今こそ、何ができるのか。このほど『勉強が楽しくなっちゃう本』を刊行した、「QuizKnock」のCEOであり、東大クイズ王の伊沢拓司さんにお話を伺いました。

*  *  *

――コロナ感染への対策は今後、長期化することが予想されます。適切な「遠隔教育」や「リモート学習」を取り入れることはもはや必然になってくるかと思いますが、この変化についてどのようにお考えになられますか。

伊沢:多くの専門家が長期化を予想していますし、 少なくともコロナ禍の爪痕は長く残るでしょう。リモートで受けられる教育や、それに合わせた教授法、課題などを早期に整備することができれば、現状のデメリットを緩和できたり、もしくは今までよりもよい学習のあり方が見つかるかも知れません。

 しかし、リモート学習などを公教育で採用する場合は、適切なサポートが不可欠です。デバイスも回線も、どの家庭にでもあるものではありません。家庭環境がリモート学習に適していない場合もあります。学習状態の管理面でも現状は課題が多いと思います。取り急ぎのプランBとしてリモート学習が採用されている場合もありますが、そのような、学びの周辺環境までセットで整備しない限り、長期の利用には不適だと考えています。教育格差が不要に広がってしまう可能性は、無視できぬものです。

――適切なサポートがままならない状態で「リモート学習」を実施しても、結果的に大きなほころびが出てきてしまう可能性がありますね。

伊沢:はい。学校が持つ、子供のセーフティーネットという役割も含めて 考えなければなりません。学校は勉強以外にも対人関係を学ぶ場であり、場合によっては給食によって栄養を補給できる場であり、情報を得る場であり、家庭での苦しみから逃げる場であるかも知れません。そのようなコミュニケーションが失われている現状は、リモート学習を急いで整備したところでカバー仕切れないのです。

 視野を広く持ち、ジャンルによっては付け焼き刃な対策で満足せぬことが今求められると思います。その上で、生徒を取り巻く環境全体へのサポートとセットで、漸進的に対策を進めていくことが求められるでしょう。

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