損保で風水災などをカバーするのが火災保険。東京海上の広報担当者は「火災保険はずっと赤字が続いている」と話す。特に18~20年度に自然災害が多く、大幅な赤字になったという。損保各社は昨秋に過去最大規模で火災保険料を値上げするなど、保険料の見直しを進めるが、災害発生に追いついていない。

 自然災害が激甚化しているのはなぜか。温室効果ガスの影響で地球が温暖化し、海面の温度が高くなり、大気中の水蒸気が増える。その結果、雨が多くなっているとされる。台風にともなう雨も増え、集中豪雨になりやすい。そうした頻度が増えているという。

 さらに、海面水位の上昇も指摘される。気象庁によると、世界平均の海面水位は20世紀を通じ1年あたり1.2から2.2ミリ上昇。このうち1961~2003年では、1年あたり1.3から2.3ミリ上昇した。主因は、(1)地球温暖化による海水の熱膨張、(2)山岳氷河や南極などの氷床の融解と考えられている。

 海面水位の上昇で「洪水など保険の引き受けリスクが高まっている」と指摘するのはニッセイ基礎研究所の篠原拓也主席研究員。特に、海面の水位が高くなっている米国メキシコ湾岸などにハリケーンが襲来すると、大規模洪水で被害が甚大になる可能性が高まっているという。米国の保険会社は洪水リスクを警戒し、「懸念される地域では保険料を引き上げ、引き受け自体をとりやめる動きも出ている」という。

 ニュージーランドでも、「保険会社の保険の引き受け縮小や撤退の動きが出ている」と篠原さんは指摘する。

「発展途上国などの沿岸部は堤防が整備されていないところがあり、水没の可能性がある。日本で人がたくさん住むところは堤防が整備され、水位が1メートルくらい上がっても、平常時にすぐ災害が起こるとは考えにくい」

 こう話すのは東北大学の有働恵子教授(水環境情報学研究分野)。ただし、日本でも海面の水位が上昇して、「台風のときに防げなくなることはあり得る」という。

 一方、前出の篠原さんは「日本では降水量は変化していないが、多雨や乾燥といった極端な降水の頻度は増加傾向」とみている。気象庁が公表する全国主要51観測地点の過去120年あまりの降水データを分析すると、降水量に変動はあるものの、大きな変化の傾向がないと指摘する。一方、1日100ミリ以上の降水の日数は増加傾向という。

 東京大学大気海洋研究所の佐藤正樹教授は「気象庁のまとめで、基準超えの大雨になる頻度が増えている。観測で裏付けられているのは頻度」と話す。大雨が増えることは、水蒸気が増えることで説明できるという。

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