地球の温暖化が進み、豪雨や洪水など自然災害が“激甚化”している。被害の続出で損害保険会社は赤字転落が相次ぎ、海外では洪水保険の引き受けから撤退する動きも出ている。
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昨年は自然災害の被害が相次いだ。6月は関東各地に大粒のひょうが降った。埼玉県庁によると、窓ガラス破損が上里町で約1千棟など、各地で同様の被害が出たほか、学校施設で倒木や渡り廊下の屋根が破損した。
熊谷地方気象台によると、6月2、3日のひょうで、埼玉県内15市7町で小麦、スイートコーン、ねぎ、なしなどの農作物や生産施設が被害を受けた。農業関連の推定被害額は38億円あまり。
要因は、本州付近を寒気をともなう気圧の谷が通過し、大気が非常に不安定となったためだ。
6月のひょうは埼玉のほか、群馬、茨城、千葉でも自動車や農作物などに被害をもたらした。
9月には台風14、15号が日本列島を襲い、暴風や記録的な大雨で住宅被害や死傷者も出た。
台風14号は9月18日、非常に強い勢力で鹿児島市付近に上陸して九州を縦断。九州を中心に西日本で記録的な大雨や暴風となった。鹿児島県屋久島町では最大瞬間風速50.9メートルを観測し、九州や四国で総雨量が9月の1カ月平均の2倍前後になるところもあった。
台風15号は9月23日、室戸岬の沖合で発生し、近畿や東海に接近。静岡県や愛知県には線状降水帯が発生して記録的な大雨となり、関東地方でも局地的な大雨で、土砂災害も起きた。静岡市では山崩れで送電鉄塔が倒壊し、市内を中心に停電が発生した。
9月の二つの台風は被害額が一定基準を上回ったとして、国は「激甚災害」に指定した。
これらの自然災害は、損保各社にも打撃となった。国内大手3グループは昨年4~9月の中間決算で赤字になるなど収益が急落。MS&ADホールディングスとSOMPOホールディングスの中間決算はそれぞれ336億円、200億円の赤字に転落。前年同期はそれぞれ1248億円、1307億円の黒字だった。
東京海上ホールディングスは中間期に865億円の黒字を確保したが、前年同期と比べ68%もの減益。強化してきた海外事業が寄与して、赤字を免れた形だ。
大手3社とも、業績不振の最大の要因は国内の自然災害。MS&ADの広報担当者は「突出してどれということではないが、数が多かった」と話し、自然災害の「頻度が上がっていることは間違いない」という。