「経営体力の弱い中小・零細企業ほど新型コロナの影響を大きく受けるのは明白です。今後も観光リゾート産業をリーディング産業と位置づけていくのであれば、沖縄県は他県以上に迅速で大胆な支援策を実行していく必要があります」

 沖縄本島以外に37の有人離島を抱える離島県ならではのリスクもある。医療体制が脆弱な離島で感染者が相次ぐと、なだれを打つように医療崩壊しかねない。

 さらに、米空軍嘉手納基地では軍関係者3人の感染が明らかになった。県は感染の経緯や隔離状況などの情報が不十分だとして米軍に詳細な情報提供を求めているが、米軍は性別や年代のほか、隔離の方法や発症までの行動歴などは明らかにしていない。基地内では日本人従業員が働いているほか、基地外に住んでいる米兵もおり、住民の不安は増す一方だ。

 日米関係に詳しい沖縄国際大学の野添文彬准教授(日本外交史)はこう訴える。

「米兵の基地外での活動自粛が指示されているにもかかわらず、街中や観光地などで姿を見ることがある。多くの米兵が沖縄で生活しているのだから、周辺住民が不安に感じないよう自治体との情報共有、情報公開の徹底が必要だ」

 住民の不安が増す中、4月10日には米軍普天間飛行場から発がん性の疑われる有機フッ素化合物PFOSを含む泡消火剤が大量に流出する事故も起きた。住宅街を泡が舞い、排水路の水面に泡の塊が浮かぶ異常事態が起きた。

「コロナ危機の中で米軍の事故やトラブルが起きると、周辺住民はパニックになります。過重な米軍基地の負担と経済的困窮が重なり、心理的圧迫は増すばかりです」

政府の設計変更申請は、県民の心情を無視し、逆なでするものだった。しかも県には一切の事前連絡がなく、新型コロナ対策で県職員の出勤を半減に抑えた矢先の出来事だった。

 なぜ、このタイミングだったのか。防衛省は新型コロナ対策として職員を交代で在宅勤務させていたが、設計変更の担当チームは一部の職員が在宅勤務を返上し、2200ページもの書類の確認にあたったという。事務処理の都合などではなく、官邸の意向が強く働いたことは間違いない。

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