■新婚さん専用列車が走っていた時代
いまひとつユニークな列車として、急行「ことぶき」を挙げてみたい。1967年3月に京都~別府間でデビューしたこの列車のコンセプトはズバリ「新婚列車」。当時は新婚旅行先として九州が人気を集めていたが、折からの高度経済成長もあって、国鉄の定期列車の1等寝台などがプラチナチケットと化していたのである。そうした背景のなか誕生したこの列車は、初列車から人気を集めてきた。当初は1等座席車と食堂車のみの編成だったが、のちに全車がA寝台化している。面白いのは寝台料金が上り列車のみ半額となっていたことで、さらに下りが京都~宮崎間、上りが宮崎~新大阪間と上下で異なる運転区間が設定されることもあった(運転区間は1972年3月ダイヤ例)。
類似列車としては広島~西鹿児島(現・鹿児島中央)/宮崎~広島間で運行されていた臨時急行「南九州グリーン」があり、グリーン車とA寝台車のみという豪華編成であった。
また、いまはなくなった種別として、「修学旅行列車」も観光列車の一種とすることもできそうだ。かつては「ひので」「きぼう」などの愛称で首都圏~京阪神間などで運行され、市販の「時刻表」にも掲載されていた。
ざっと過去帳を追ってみたが、懐かしさを覚えると同時に、今後の新顔にも期待を寄せたくなる。あいにく、目下のところ観光列車という世相ではないが、またこうした魅惑の列車たちとの再会を心待ちにしたい。(文・植村誠)
植村誠(うえむら・まこと)/国内外を問わず、鉄道をはじめのりものを楽しむ旅をテーマに取材・執筆中。近年は東南アジアを重点的に散策している。主な著書に『ワンテーマ指さし会話韓国×鉄道』(情報センター出版局)、『ボートで東京湾を遊びつくす!』(情報センター出版局・共著)、『絶対この季節に乗りたい鉄道の旅』(東京書籍・共著)など。