鉄道ファンのみならず幅広い人気を集める観光列車。趣向を凝らした内外装や車内イベントなどを打ち出し、ジョンフルトレインなどの名称でも親しまれているが、その歴史を辿ると時代背景が浮かび上がってきて興味を引く。そこで、ちょっと意外な観光列車を含め、その足取りを探ってみることにした。
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■進化を続ける観光列車たち
鉄路を旅すれば観光列車にあたるではないが、中小民鉄を含む鉄道各社で観光列車が花盛りである。近年は列車レストラン形式のグルメ列車が人気を集めるほか、JR九州の「ななつ星in九州」を皮切りに、超豪華クルージング列車もその存在感を示している。
グルメ列車は比較的短距離のローカル線や民鉄、第三セクター路線に進出しているのが特徴で、沿線の特色を生かしながらユニークな列車が矢継ぎ早に誕生してきた。いすみ鉄道の「レストラン列車」や西日本鉄道の「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」、西武鉄道の「旅するレストラン 52席の至福」、JR西日本の城端(じょうはな)・氷見線を走る「ベル・モンターニュ・エ・メール」などなど。JR東日本では新潟県の地酒に着目し利き酒などが楽しめる「越乃Shu*Kura」、新幹線電車車内に足湯などを設けた「とれいゆつばさ」、新幹線車両を現代美術館に仕立て上げた「現美新幹線」など大胆なアイデアを打ち出し、一歩先の観光列車を実現してきた。
■宴会好きが観光列車の原動力に?
こうした「ジョイフルトレイン」の始祖といえそうなのが、国鉄時代に登場した欧風客車「サロンエクスプレス東京」であろう。1983年に改造で誕生したこの列車は、7両固定編成すべてがグリーン車という豪華版。編成両端を展望車に仕立てたほか、中間5両はコンパートメント形式とし、グループ客が寛ぎやすい空間が話題を呼んだものだ。
好評を得た国鉄は、大阪地区に「サロンカーなにわ」を投入(1983年)、続いて名古屋地区に「ユーロライナー」がお目見えした(1985年)。一連の列車は団体やグループ客をターゲットとしていたが、さらに歴史を遡ると1960年にお座敷客車スハ88-1が盛岡で誕生しており、こちらも同様に宴会ふうの利用を想定した作品だったようだ。