堀込泰行をあらためて紹介するなら、こんなふうになるだろうか。「良いうた」という当たり前とさえ思える概念を、洗練されたメロディーと唯一無二の声で表現するシンガー・ソングライター。
堀込泰行が実兄の堀込高樹と組んでいたキリンジ(当時の表記)時代から、耳をそっと撫でるようなシルキーな歌声で、滑らかな清潔感のある旋律を聴かせていたことは、その頃からのリスナーであれば、今さら説明されるまでもないことだろう。心地よいハイトーン・ヴォイスで、言葉を丁寧に発音しながらメロディーにフックを与えていく。このボーカル・スタイルは、彼がキリンジのメイン・ボーカリストとしてデビューした1990年代半ばから、他の追随を許さずにきたものだ。ラジオでも、町中でも、CDショップでも、その声が聞こえてきただけで、それが誰であるかがすぐにわかるアーティストなど、そんなにいるものではない。今や、マーヴィン・ゲイやカーティス・メイフィールドといった歴史的ソウル・シンガーにも負けない日本人ボーカリストと言ってもいい。
その堀込泰行が5曲入り作品「GOOD VIBRATIONS 2」をリリースした。曲ごとに他のアーティストらとコラボレートした企画シリーズの第2弾だ。今回も音楽フィールドを越えた“異種格闘”が味わえる力作になっている。
2013年にキリンジを脱退して早7年、フル・アルバムも2作品(16年の「One」と18年の「What A Wonderful World」)を発表し、ソロ・アーティストとして順調に活動を進める堀込。72年5月生まれの彼は現在48歳だが、驚くことにその透明感のある歌声はこの新作でも変わっていない。歌い手として自ら“素材”になることも厭わないような包容力が、今作の5曲にもある。ビーチ・ボーイズのヒット曲からもらってきたような「GOOD VIBRATIONS」とは、まさしくこの人のためにあるタイトルではないかとさえ思えるほどだ。