そして、森法相の国会での答弁は二転三転した。
当時の国会では、桜を見る会をめぐり、安倍首相の後援会をはじめ、自民党の幹部たちの後援会関係者たちが多数、会に招待されていたことが明らかとなり、「税金の私物化」として大きな問題となっていた。
政府が公表している開催要領の招待範囲から離れた後援会関係者が、多数招待されていたのだ。かつての自民党であれば、いずれかの幹部が安倍首相にやめるよう忠告し、首相はそれに応じていたはずである。
ところが、どの幹部もそうせず、それどころか自分たちの後援会関係者たちをどんどん桜を見る会に送り込んでいたのである。党幹部たちの神経が緩みすぎて、いわば腐敗していたわけだ。
それに対し、野党からもメディアからも、そして国民からも大きな批判の声が出ていた最中である。そうした状況の中で、わざわざ国民の神経を逆なでするような、「黒川事件」が起きたのである。
5月15日には、松尾邦弘元検事総長ら検察OBたち十数人が、検察庁法改正案に反対する意見書を提出した。
私は、もしも新型コロナウイルスの大感染が起きていなければ、安倍内閣は終わっていたと捉えている。コロナに救われた安倍内閣が、国民がウイルスと必死で闘っている最中に、なぜわざわざ黒川事件を正当化するような検察庁法改正案など出すのか。私は、安倍内閣の無神経さがまったく理解できない。
※週刊朝日 2020年5月29日号