東海・東南海・南海地震が3連動する「南海トラフ巨大地震」について、内閣府の検討会が3月31日、新たな想定をまとめた。高知県黒潮町に最大34.4メートルの津波が到達し、稼働停止中の浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)付近では、建設中の18メートルの堤防を超える21メートルになるという。私たちの街では何が起こるのか。徹底検証した。
そもそも南海トラフ巨大地震とはどのようなものなのか。検討会の委員で東北大学大学院の今村文彦教授(津波工学)はこう解説する。
「想定外の被害を生んだ東日本大震災の反省を踏まえて2003年の中央防災会議の想定を見直し、最大マグニチュードを9.1に設定。千年周期で起きる3連動地震も視野に入れ、今後可能性のある最大クラスの地震を想定しました」
では、実際に南海トラフ巨大地震による大津波が発生したら、各地にどんな被害が出るのか。
東京は南海トラフから100キロ以上離れ、津波高も湾岸部の港区で2.3メートルとなっている。だが油断は禁物だ。名古屋大学大学院の川崎浩司准教授(海岸工学)が言う。
「揺れや津波の衝撃に、今の防潮堤や水門が耐えられるかどうか疑問です。地盤沈下、液状化現象なども伴って堤防が決壊すれば、東部の"江東デルタ地帯"が水没する恐れがある」
"江東デルタ地帯"は荒川と隅田川に囲まれた海抜0メートル地帯で、墨田、江東、江戸川の3区にまたがる。区民は合わせて約140万人。5月に開業が予定される東京スカイツリー(墨田区)の足元にまで津波が押し寄せるという。
「河川にも注意が必要です。3.11の例を見ても、東京湾とつながっている川は津波が内陸部まで遡上してくると考えたほうがいい。特に地方自治体が管理する2級河川は堤防が老朽化している可能性があり、要注意です」(川崎さん)
2012年4月20日号