(左から)東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科・平野浩彦部長、九州歯科大学・臼井通彦准教授、神奈川歯科大学大学院・山本龍生教授(写真はすべて本人提供)
(左から)東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科・平野浩彦部長、九州歯科大学・臼井通彦准教授、神奈川歯科大学大学院・山本龍生教授(写真はすべて本人提供)
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20本以上の歯が残っている人の割合 (週刊朝日2020年6月5日号より)
20本以上の歯が残っている人の割合 (週刊朝日2020年6月5日号より)

 新型コロナウイルスの感染を防ぐため、口腔(こうくう)内を清潔に保つことも大切だと言われている。そもそも虫歯や歯周病は、脳卒中、心臓病、糖尿病のリスクを高める。しかも、認知症も引き起こしかねない。今日から、口の健康習慣を身につけよう。

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 まずは歯の本数を維持することが大切だ。1989年、国と日本歯科医師会が「8020(はちまるにいまる)運動」を開始した。「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という目標の下、当初は1割にも満たなかった達成率が、2016年には51.2%に上がった。

 一方で、別の問題が増えている。歯が残っていることで生じる歯周病などのトラブルだ。東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科部長の平野浩彦さんは言う。

「残した歯をいかに維持するかが重要で、キーワードの一つが歯周病予防です」

 歯周病は、さらにさまざまな病気を引き起こすことでも知られている。

「例えば20本以上の歯があり歯周病が進んでしまった場合(4ミリ以上の歯周ポケット)、そこには炎症の帯のようなものがあり、その帯を全部合わせると、小さな手のひらぐらいの広さになります。それだけの面積で慢性的に炎症が起きていて、体内に(炎症で発生した)ケミカルメディエーター(化学伝達物質)などが回っている。それはさすがに体に悪いと思いますよね」

 歯周病菌が気道を介して肺にいけば、気管支炎や肺炎になり、炎症で発生した物質が血液を通して全身に回れば、心臓血管疾患、脳卒中、早産や低体重児の出産を引き起こす。炎症物質が糖代謝を阻害するため、糖尿病も悪化する。

 一方、歯周病治療をしたことで、糖尿病の可能性があるかどうかを判別する数値・HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)や、FPG(空腹時血糖値)が有意に減少したというエビデンス(科学的根拠)もある。

 平野さんはこうも言う。

「(歯周病などで)歯を失い、義歯も使わなければ、転倒や骨折のリスクが高くなるという調査結果もあります。これはバランス機能が崩れたり、咀嚼(そしゃく)機能の低下で栄養状態が落ちて筋力が低下したりすることが原因と考えられます」

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