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 社員の「わがまま」に耳を傾けることで、離職率を7分の1に下げ、売り上げを4倍に伸ばすことに成功したサイボウズ社。社長の青野慶久氏は、「わがまま」こそが「新たな社会を創り出す原動力」だと断言する。その真意を、サイボウズチームワーク総研著『「わがまま」がチームを強くする。』(朝日新聞出版)から一部を抜粋・再構成して紹介する。

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■「悪いわがまま」とは、どんなわがまま?

 お金に関心がある人、住む場所に興味がある人、着る服にこだわる人。人の関心はそれぞれに違っていて、まさに100人いれば100通りでしょう。

 世間一般では悪者として扱われている「わがまま」も、それらの関心の一形態にすぎません。それぞれの関心は、それぞれの「こうありたい」という方向性――「欲望」や「理想」――のあらわれです。つまり、わがままの本質が欲望だからこそ、すべての人が持っていて、すべてが異なっていて当然なのです。

「わがままには、いいも悪いもない」というのが原則です。しかし、その原則自体を否定するわがまま、つまり「他人のわがままを阻害するようなわがまま」だけは、「悪いわがまま」と呼んでいいと思います。

 たとえば、「選択的夫婦別姓」の問題。サイボウズ社長の青野は、結婚後の別姓を認めるように国を相手に訴訟を起こしました。確かに「別姓にしたい」というのは青野のわがままでしょう。ただし、同姓にしたい人は同姓にすればいいし、別姓にしたい人は別姓にすればいいと言っているだけなのです。つまり、「選択肢をください」というわがままは、他の人のわがままをまったく阻害していません。

 では、「これまで通り、みんな同姓にしろ」という要求は、どうでしょうか。このわがままは、明らかに、別姓にしたい人のわがままを阻害しています。そのようなわがままがまかり通る社会(個人の選択肢を認めない社会)は、いろいろな人のわがままが叶わなくなる社会です。

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