新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の議事録が、公開はおろか作成さえされていないことに批判が高まっている。菅義偉官房長官は、「政府が決めた」公文書管理のガイドラインの解釈論で、議事録作成が義務付けられていないなどと言い訳するが、ガイドラインには、議事録を作成「してはいけない」とはどこにも書いていない。安倍晋三総理や菅官房長官が「議事録を作成して保存、公表せよ」と一言言えば、今日からでも作成されるはずだ。
【資料】議事録の「改ざん」を防ぐには?ある会議の議事公開要領
西村康稔経済財政・再生相が言う「専門家が自由に率直に議論することが大事」という理屈も、実は何十年も前から官僚や政治家が使うまやかしだ。
そもそも、「専門家会議」「有識者会議」などの会議を作るのは、政府の政策が、第三者の客観的で合理的な意見に基づいているかのように見せかけて、自分たちの責任を逃れるためだ。
例えば、官僚や政治家がその利権を守るために、有識者会議を使う場合、何をするか。彼らは、息のかかった委員に自分たちの声を代弁させる。しかし、誰が何を言ったかがわかると、利権擁護の発言の主が特定されるため、世論の批判を恐れる委員がそういう意見を言えなくなる。そこで、「自由闊達な議論をする」ために議事録は作らないという理屈を編み出した。つまり、議事録を作成しないのは、「後ろめたい議論を安心して行う」ためなのだ。
さらに、今回の専門家会議の議事録を公開したくない理由はもう一つある。
それは、政府が決定した政策と専門家会議の議論が矛盾していることや会議の議論から政策対応までにやたらと時間がかかっていることが、後からわかってしまうリスクがあることを恐れているということだ。
例えば、緊急事態宣言発出の必要性がかなり早い段階で指摘されていたことがわかれば、政府の責任が問われるし、PCR検査を拡大すべきという意見が出ていた時期についても同じリスクがある。いずれにしても、議事録を出さないと政府が言うときは、「政府に都合が悪いことがあるからだ」と考えたほうが良い。