※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長
松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長

 一般的に、スポーツは「健康によいもの」と考えられています。多くの人がスポーツで元気で丈夫な体を作り、長生きしたいと願っているはずです。ですが最近、いくつかのスポーツでプレー中に蓄積されたダメージが、将来の病気の発症リスクを高める可能性があることが明らかになってきました。最新の海外の研究では、元プロサッカー選手は認知症などの脳の病気を発症して亡くなる確率が、一般の人に比べて高いというデータが発表されています。スポーツを楽しみ、将来も健康であり続けるために、どんなことに注意すればよいのか、日本スポーツ医学財団理事長の松本秀男医師に教えてもらいます。

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 スポーツは、心身の健康の保持増進に重要な役割をもっています。超高齢社会を迎えているいまの日本では、国の施策としてスポーツを通じた健康増進をはかり、健康長寿社会をつくることを推進しています。

 大切なことは、平均寿命が長くなるだけでなく、元気で長生きできることです。高齢者が要介護となってしまうおもな原因として、脳卒中、認知症のほか、関節症や転倒骨折などがあげられます。そこで、スポーツを通じてそれらの予備軍となるメタボリックシンドロームやロコモティブシンドロームを防ぐことが重要となります。スポーツをしている人では、肥満や生活習慣病が減り、骨粗しょう症の割合も低くなることがわかっています。

 一般的には健康によいはずのスポーツでも、プレー中にはある程度のリスクが伴います。スポーツをする際には、転倒・接触による「外傷」や体の使い過ぎで起こる「障害」に、注意する必要があることはいうまでもありません。

 そのなかでも、頭を打ったときに起こる脳しんとうには、もっとも注意が必要です。じつは最近になって、その脳しんとうが、将来の認知症などの病気の発症率を上昇させる要因となることが複数の研究データで明らかにされ、問題視されています。

 昔からプロボクサーには引退後、精神症状や行動異常、パーキンソン病や認知症などの神経変性疾患が多くみられることが知られていました。それは、脳しんとうを繰り返したことで起こる「慢性外傷性脳症」の症状で、俗に「パンチドランク症候群」と呼ばれます。

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ボクシング以外のもアメフト、ラグビーは要注意