新型コロナウイルスには血栓をつくりやすい性質があり、重症化に関連することが明らかになってきた。AERA 2020年6月15日号は「血流」を特集。血栓とウイルスの関係に迫る。
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血の塊、「血栓」。
これができると血液の流れは止まり脳梗塞や心筋梗塞など命にかかわるさまざまな疾病を引き起こす、人体にとって怖い存在だ。今この血栓が、新型コロナウイルスの患者を重症化させる原因の一つであることがわかってきた。
4月下旬、海外から衝撃的なニュースが飛び込んできた。米CNNの日本語ニュースサイトが、新型コロナウイルスに感染したニューヨーク市の病院に入院する30~40代の患者5人に脳梗塞を併発する症例が相次いでいると報道したのだ。医師で作る研究グループは、「感染によって血栓ができやすくなったことが原因である疑いが強い」とする報告をまとめた。続いて5月、今度は英国のBBCが、新型コロナウイルスに感染した患者のうち重症患者の約30%に血栓が見られていると報じた。これまで新型コロナウイルスにはせきや発熱、味覚・嗅覚障害といった症状が報告されていた。だが、ウイルスが血管を傷つける性質があることもわかってきたのだ。
そもそも血栓の形成には(1)血流のうっ滞(2)血液の凝固(3)血管内皮の障害──この3要因が大きく関与するといわれる。19世紀のドイツの病理学者ウィルヒョウが提唱したもので、「ウィルヒョウの3条件」と呼ぶ。血栓は動脈にも静脈にもでき、大きなものは何と直径1センチ、長さ10センチにも及ぶ。血栓によって生じる病気は多岐にわたり、動脈でできた血栓は脳や心臓の血管に詰まって脳梗塞や心筋梗塞を、静脈にできた血栓は肺に詰まって肺塞栓症などを引き起こす。
新潟大学大学院特任教授の榛沢(はんざわ)和彦さん(心臓血管外科)は、新型コロナウイルスは血栓をつくりやすい性質があると指摘する。
「血管にあるACE2と呼ばれる受容体に、新型コロナウイルスの突起状のスパイクが結合するとウイルスが血管内に入り、血管内皮を傷つけ、そこに血栓がつくられます」