実際、15年度にメキシコ産の豚の筋肉から検出された最大値0.2ppmのクロルテトラサイクリンは、飼料添加物として使われていたが、耐性菌を生むため、日本では19年12月に使用が禁止された。
人体や家畜への摂取許容量はまちまちだが、結果として、抗生物質の畜産物1キログラム当たり使用量は各国で大差がある(米国の自然資源防衛協議会・16年から)。
米国は、牛241ミリグラム、豚345ミリグラム、家禽107ミリグラムで、英国やフランス、オランダなどの上位国を大きく引き離す。一方、家畜と家禽の合計では、362ミリグラムと最多のスペインをはじめ、イタリアや米国、ポーランド、ドイツ、フランスなどが上位を占め、欧州勢が目立つ。
主要畜産国ごとの人を含む使用量(千人当たりDDD。DDDは抗生物質使用量を測る単位)は、イタリア26.6、フランス25.9、英国20.5、スペイン18.0、デンマーク17.8、ドイツ11.5である。ちなみに日本は14.2、韓国は27.7(WHOによる。米国は未調査だが、使用量が最大であることは間違いない)。
WHOは、抗生物質の使用を減らして多剤耐性菌の危険性を抑えるため、多剤耐性緑膿菌やピロリ菌など12種類を対策が必要な耐性菌として公表した。大きな脅威にさらされている米国は、土壌や河川などに生息するアシネトバクターなど5種を「最も怖い細菌」とし、21種類を緊急性ごとに4段階に分けた対策を練っている。
日本は15年のWHO「薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクション・プラン」に基づき、「薬剤耐性対策アクションプラン2016‐2020」を策定した。肺炎球菌のペニシリン耐性率を15%以下にすることなどを目標に掲げる。
こうした取り組みの成果は、地球規模で畜産物用の使用量を抑制・減少できるかどうかにかかっている。(愛知大学名誉教授・高橋五郎)
※週刊朝日 2020年6月19日号