(2)家畜飼料に添加された抗生物質の継続的使用が、家畜の抗生物質薬効を下げ、耐性菌の発生と増殖を招いたこと。

 (3)抗生物質を含む畜産物・卵・乳などの摂取が、人体に常にある菌の「バランス崩壊」を招き、健康を維持するための自然免疫力や抵抗力を低下させたこと。

 畜産物にある抗生物質の残留最大規制値は、国によってまちまちだ。日本では06年以降、最大値規制が対象となっていない場合は、一律0.01ppmとされている。最大値規制が対象の抗生物質(ポジティブリスト)は113種、検出されてはならないものが19種ある。

 そこで牛・豚向け抗生物質の残留最大値を、輸入の最も多い米国と比較した。

 日本が最大値を下回るものが、牛肉・同内臓の場合でアンピシリン(肺炎球菌、腸球菌属、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌などに有効)など16種。最大値を上回るものがコリスチン(大腸菌、赤痢菌などに有効)など19種、最大値が同じものはバシトラシン(黄色ブドウ球菌、通性嫌気性菌などに有効)などで14種。

 豚肉・同内臓では、最大値を下回るものがゲンタマイシン(ブドウ球菌属、大腸菌、緑膿菌などに有効)など5種。上回るものはアプラマイシン(細菌性下痢症などに有効)など12種で、セフチオフル(肺炎治療などに有効)など8種が同じだった(米国の連邦規則集、日本食品化学研究振興財団から)。米国よりも最大値を上回るような規制の緩いケースは心配だ。

 さらに問題なのは、年154万トンの60%近くが海外依存の牛・豚であり、このうち規制の緩い米国産がダントツの33%を占めることだ(18年度)。

 これでは、国内産の残留規制と輸入の水際規制をいくら厳しくしても、国民の健康を守れるのか大いに不安だ。米国に続く牛・豚の輸入先は豪州、カナダ、スペイン、デンマークなどで、いずれも「抗生物質大国」だ。

 日本では原則として毎年、残留検査が公表される。最新版(18年度)によると、50種を対象にした検査で、豚の筋肉・腎臓から9例、家禽から3例、それぞれ抗生物質を検出。豚の筋肉から検出された最大値0.05ppmのドキシサイクリンは、ブドウ球菌属や肺炎球菌、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、ペスト菌、コレラ菌、クラミジア属などに有効だとされる。これらから耐性菌の発生はないとみられるが、リスクが消えたわけでない。

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