北朝鮮は3月16日、「人工衛星」を搭載したロケットを、4月12日から16日の間に打ち上げると予告した。2009年のテポドン発射同様、衛星は事実上の弾道ミサイルとみられている。金正日総書記死去から3カ月、後継者・金正恩氏(29)の思惑とは―――。
「4月15日は故・金正成主席の生誕100周年で、大規模な祝賀行事が予定されている。父親が熱を入れていた衛星打ち上げを成功させ、花を添える演出だろう」
と、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は言う。
「正恩の指導力を誇示し、新体制を固めたいのでは。長距離ミサイルの発射は2月の米朝合意で一時停止と決まったばかりだが、衛星なら問題ないという発想と思われる」(黒井氏)
岡崎研究所の金田秀昭理事も、今回は政治的に工夫した形跡がみられると話す。
「衛星は東向きに発射したほうが地球の自転を利用できるので軌道に乗りやすい。09年のテポドン発射も東向きだったが、今回の発射は南向き。東に位置するアメリカを刺激しないための配慮だろう」
亡き父の手法を彷彿とさせる"ミサイル外交"の中にも、若き指導者の微妙な"弱気"が垣間見える。
※週刊朝日 2012年4月6日号