「凍て付いた氷が溶け、水が流れ出し、そのふもとに草花が芽吹き、昆虫が戯れる。そんな情景を想像した」
かつてなく風通しの良い響きに、同楽団理事長の平井俊邦の口から思わずこんなロマンチックな言葉が漏れた。
奏者同士が互いの音に改めて心を研ぎ澄ませる、ポジティブな「訓練」にもなりそうだ。ただ、そもそも作曲家がデザインした音響空間、イメージした自然なグルーヴのようなものは、必然的に消えてしまうことになる。
自分たちの最高の表現を志すことに対し、社会から否応なく「待て」を命じられたオーケストラ業界。芸術という営みを継続したいという意志を、どのような形で貫くか。そのビジョンにこそ、それぞれの楽団の存在理由が可視化されるはずだ。
業界団体がたちあげた、公演再開へのロードマップとガイドラインを模索する「クラシック音楽公演運営推進協議会」発起人の一人、入山功一はこう語る。
「いま大切なのは、クラシックに関心のない人たちにこそ私たちの行動を理解してもらうこと。オーケストラはそれぞれの街の顔であり、一部のファンの独占物ではない。オーケストラが社会との関係を結び直すための新たな一歩を大切に踏み出したい」
(朝日新聞編集委員・吉田純子)
※AERA 2020年6月29日号
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