ある自動車部品メーカーでも夏の支給を見送り、メガバンク系企業は減額とするなど、ボーナスカットの嵐はさまざまな業種に及んでいる。

 大手企業の夏のボーナスの全体像は、経団連が6月17日にまとめた1次集計結果が目安になる。同日までに回答のあった86社の平均妥結額は92万5947円で、19年夏から6%減少した。

 前年と比べた増減率を業種別にみると、鉄鋼(25%減の56万9679円)や化学(6%減の89万6237円)、非鉄・金属(5%減の73万7506円)などの減少幅が大きい。非製造業の平均は10%減の107万9915円だった。プラスとなったのは約8%増の70万177円だった紙・パルプなど一部に限られる。

 ただし、経団連の集計はあくまで春時点で夏のボーナスを決めていた企業が中心だ。最終的な集計は7月になる予定で、今回のまとめには新型コロナの影響は十分に反映されていない。

「今年の冬や来年の夏のボーナスは、もっと厳しくなるでしょう」。こう指摘するのは、第一生命経済研究所の新家義貴・経済調査部長だ。

「業績への影響が最も大きいのは、緊急事態が宣言され、企業や消費者が営業や外出の自粛を迫られた4~6月です。今夏のボーナスにはそうした影響が反映され切っていません。4月以降の業績が織り込まれる冬のボーナスは、夏よりも厳しく、前年の同じ時期に比べリーマン・ショック後を上回る2ケタの落ち込みとなる可能性があります。経営体力が乏しい中小企業はより厳しい状況におかれるでしょう」

 企業の人事戦略に詳しいセレクションアンドバリエーション(大阪市)の平康慶浩社長も、同じ見方だ。

「緊急事態が宣言された4~5月に打撃を受けた企業は、給与や賞与の原資となる売り上げや利益そのものが減っています。また同時期に休業や時短勤務を余儀なくされた社員は、ボーナスや給料に反映される社内の業績評価も高くなりにくい。3月期決算企業の場合、4~9月の上半期の業績や評価が反映される冬のボーナスは『もらえるだけマシ』と考えておいたほうがよいかもしれません」

 ボーナスや給料に業績が反映されるまでには、時期に少しずれがある。足元で苦しむ新型コロナの影響が、社員の懐に本格的に響いてくるのはこれからなのだ。

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