単3電池2本でグランドキャニオンの断崖絶壁(約530メートル)を登頂したロボット「エボルタ」の開発や、2004年に代表作「クロイノ」が米タイム誌で「最もクールな発明」に選ばれたことで有名なロボットクリエーターの高橋智隆氏(36)。"ロボットの天才"と呼ばれる彼がロボット開発の今後を語った。

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 ロボット開発の世界でも、とかく「人の役に立つロボットを作ろう」という考えになりがちですが、実は、そんな発想では結局、役に立つものなどできません。そもそも、既存の作業を代替するようなロボットでは、市場規模は最初から限定されています。冷たい水で洗濯する老母を思って全自動洗濯機を発明した――みたいな時代は終わったんです。

 いまは、面白おかしく作った発明品がネット上で話題になり、誰かが出資してベンチャー企業ができる、といった流れが新産業創出の過程になっています。当初は、その企業自身が何の役に立つかわかっていない事業でも、普及していく中でユーザーが役割を見いだしてくれる。

 これは、いまやネットの常識となった「ツイッター」や「ユーチューブ」「フェイスブック」なんかも同じで、最初はただ面白がってみんなが使っていただけのものが、マーケティングに役立ったとか、災害時の情報共有に役立ったとか、なんらかの用途が生まれました。こういった自由な発想が、今後の日本には必要なのではないでしょうか。

※週刊朝日 2012年3月9日号