
新型コロナウイルスの影響による鉄道利用客の減少に伴い、駅構内で販売する駅弁屋の売り上げが大幅に落ち込む中、各社は通販に力を入れ始めている。お取り寄せした駅弁を自宅で食べることで新たな発見も。AERA2020年7月6日号から。
* * *
牛の顔をかたどったふたを開けると童謡「故郷(ふるさと)」のメロディーが流れる「モー太郎弁当」で有名な「駅弁のあら竹」(三重県松阪市)の他にも、通販に力を入れる駅弁屋は増えている。山陽新幹線・西明石駅の「淡路屋」(兵庫県神戸市)は、5千円以上の購入で送料無料になる期間限定のキャンペーンを実施した。伝統漁法に使用するたこ壺を模した陶器に、真だこと穴子、季節の野菜を盛り付けた「ひっぱりだこ飯」から、子どもに人気の「ハローキティ新幹線弁当」まで、20種類以上の駅弁が購入できる。
函館本線・長万部駅の「かにめし本舗かなや」(北海道長万部町)は、通販限定のお得なセットを用意している。
ラジオ番組の放送作家であり、駅弁ライターである望月崇史さん(44)さんは、「駅弁は、その土地の水や空気を感じながら食べるのが最高の楽しみ方」と話す。
「私が歴史好きというのもありますが、駅弁ってその背景まで含めて味わうものだと思うんです。例えば、山梨の牛肉弁当は、なぜあれほど甘い味付けなのかと疑問に思っていたんですが、その土地の煮物を食べてみると同じように甘かったんですね。『この背景があるから牛肉弁当も甘いんだ』と調べていくうちにわかった。駅弁には、その土地の食文化が全部詰まっているんです」
さらに、お取り寄せした駅弁を自宅で食べることで新たな発見があったという。
「お弁当とじっくり向き合うことができるので、繊細な味付けや彩りの工夫などから、作り手の思いがより感じられるんですよね。これまで以上に駅弁一つひとつのストーリーに思いをめぐらせるようになりました」
文末に紹介するのは、望月さんがすすめる、全国各地のお取り寄せできる駅弁だ。どれも美味しそうで思わず見入ってしまうが、弁当のふたを開ける前に、駅弁史をさらっておきたい。