シリアスな役からコミカルな役まで、幅広い演技で人気を集める女優、広瀬アリスさんがAERAに登場。新型コロナウイルスによる自粛期間を経た今、心境の変化を語った。AERA 2020年7月13日号から。
【画像】広瀬アリスさんの妹・すずさんが飾ったAERA表紙はこちら!
* * *
3月、花と緑があふれる都内の公園で撮影した。「グアムで撮ったみたい」と写真家の蜷川実花が言うと、口を大きく開け朗らかに笑った。6月、オンラインのインタビューでも、爽やかな風が吹き抜けるような大きな笑顔は健在だった。
2008年に13歳で俳優デビュー。複雑な内面を抱えた役からコミカルな役まで、幅広く演じる。俳優としての転機は、17年に放送されたNHK朝の連続テレビ小説「わろてんか」だった。
「『これ以上出すものはない』と、何一つ心残りがなかった。やり切った、と思うことができた作品でした」
物語の鍵を握る女性漫才師を演じた。毎日2、3時間は漫才の稽古を行い、多い時は8ページものせりふを口にした。舞台に立つと、お客さんが誰一人笑っていない。そんな夢を毎晩のように見て、精神的に追い込まれた。
「経験としてとても大きかった。以降は、どんなに寝られない現場でも『あの時の私はできたのだから、こんなの甘いよ』と言い聞かせ、乗り越えることができるようになりました。一度落ち込んだり、追い込まれたりした人って強いなと思いました。必ず糧になるな、と」
新型コロナウイルスの影響による外出自粛期間中は、「仕事復帰後に身体が緩んでいるのは嫌」と、規則正しい生活を意識して体質改善などに励んだ。気になっていた映画をまとめて観るなど、心の片隅で思っていた「やりたい」を実現した。
「進化した広瀬をお届けできたら」
画面上での別れ際、そうはっきりと口にして、晴れやかな笑顔を見せた。努力家で真っすぐ、飾らない人柄は画面を通しても伝わってきた。(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2020年7月13日号