中屋敷法仁(なかやしき・のりひと)/1984年、青森県生まれ。劇団「柿喰う客」代表。舞台「黒子のバスケ」など2.5次元作品も得意とする新鋭演出家(撮影/写真部・小黒冴夏)
中屋敷法仁(なかやしき・のりひと)/1984年、青森県生まれ。劇団「柿喰う客」代表。舞台「黒子のバスケ」など2.5次元作品も得意とする新鋭演出家(撮影/写真部・小黒冴夏)

 舞台「トムとディックとハリー」で初の兄弟役に挑む宇宙Sixの江田剛さん、山本亮太さん、原嘉孝さん。多くのエンタメが公演中止に追い込まれたこの2カ月を経て、公演にかける思いはより強くなったという。AERA 2020年7月13日号に掲載された記事で、演出家の中屋敷法仁さんと共に、その思いを語った。

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 舞台「トムとディックとハリー」は個性も性格もバラバラな3兄弟が繰り広げる抱腹絶倒のコメディーだ。まじめな長男トム(江田剛)は養子を迎える面接を控え、朝から妻と大忙し。そんななか、お騒がせの問題児・次男ディック(山本亮太)が大量の密輸タバコと酒を持ってくる。さらに天然な三男ハリー(原嘉孝)がトムのために、とんでもない計画を思いつく。

江田剛(以下、江田):ようやくステージができる! という喜びを噛みしめています。今回の自粛でエンターテインメントの大切さを改めて感じていましたから。

山本亮太(以下、山本):わかりやすい笑いのなかに奥深い笑いがあってホントに楽しめる作品です。3兄弟役は僕らにとっては挑戦なので、バラバラな個性のなかに“兄弟感”を出せれば勝ちなのかな、と思っています。

原嘉孝(以下、原):単なるドタバタ劇ではなく、家族や兄弟の絆が伝わればいいですね。個人的には早口のセリフが多くてスピード感があるから、滑舌をよくして、内容に脳みそをついて行かせるのが課題です。

山本:でも今回、一番セリフが多いのは江田ちゃんだからね。

原:そうそう。幸ちゃん(4人組である宇宙Sixメンバーの松本幸大さん)も「江田ちゃんのセリフがすごく多いけど、大丈夫かな」って心配してた。

中屋敷法仁(以下、中屋敷):僕は我ながらこれまでもいろいろ頭のおかしい演出をしてきたと思うんですけど、実は今回が一番“あぶない”舞台なんじゃないか、と思ってるんです。

江田・山本・原:ええっ?

中屋敷:僕の異常な家族観や家族愛をみんなに押しつけているんじゃないかって。僕は姉が2人いて家族も異常に仲がいいんですよ。この舞台の3兄弟にもそれが反映されているのかもしれない。これだけバラバラな3人が離れず一緒にいるのがまずおかしいし、ケンカしても殴り合いにもならないし。

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