新庄とも思い出深い話がある。
新庄も走攻守のすべてでファンを意識し、魅せるプレーを考えていた。そのため守備でチャンスがあれば、ダイビングやスライディングを試みていたという。その新庄が犯したミスを真横の守備位置で見ていたという。
「走って行けば追いつけるような飛球をスライディング捕球に行き、顔に当てた。レフトで見ていた僕は爆笑ですよ。普通に行けば良かったですね、って恥ずかしそうにしていた」
ーー総合的に判断すると? 守備だけなら新庄。外野手としてはイチロー。
「守備だけなら新庄が上だが、打撃に関しては、意外性があって目立つところで打った印象があるが、技術的には高くなかった。ここがイチローとの大きな違い。外野手には打撃や走力もないと評価されない。だからトータルで考えれば、イチローの方が上になるのかな」
生涯安打数イチローはNPB1278本、MLB3089本。新庄はNPB1309本、MLB215本。打撃成績では両者の差は明確だが、それだけでは測れないものがある。
彼らの進化を目の当たりにしてきた本西氏の指摘だけに興味深い。外野守備という簡単には真似できない大きな武器がある2人。イチローと新庄が、間違いなく日本球史に残る名外野手であることは疑いようもない。(文・山岡則夫)
●プロフィール
山岡則夫/1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。