停滞する梅雨前線の影響で、連日、甚大な浸水被害が発生している。だが、気がかりなのは集中豪雨だけではない。6月25日には千葉県東方沖を震源とする最大震度5弱の地震、また7月9日朝には茨城県で震度4の地震を観測するなど、各地で地震が頻発している。今、大地震の危険性はどうなっているのか。AERA 2020年7月13日号では地震を徹底調査。災害列島に生きる私たちは真剣に考えたい。
【全47都道府県】過去10年間の「震度別」地震回数データはこちら
* * *
「ドドドド……」
地鳴りのような音が響くと同時に、下から突き上げられるような揺れを感じた。
「ずいぶん減りましたが、今も夜寝ていると起こされます」
6月下旬、長野県松本市の上高地。穂高連峰の登山のベースとして知られる標高約2千メートルの山小屋、岳沢(だけさわ)小屋の責任者を務める栗原祐樹さん(37)は不安げに話す。昨夜も一昨夜も、震度2程度の揺れがあったという。
この「長野上高地周辺群発地震」が始まったのは4月22日未明。翌23日にはマグニチュード(M)5.5を観測し、雪崩や落石が起き、倒木もあちこちで起きた。
穂高連峰周辺の山小屋は、新型コロナウイルス感染予防のため7月14日まで営業休止中だ。栗原さんは、最小限のスタッフで山小屋に滞在し落石や倒木などを片づけ、道を整備している。
「営業再開までに地震が収まってほしいです」(栗原さん)
上高地一帯に断層多い
なぜ今、上高地周辺で地震が頻発しているのか。
信州大学震動調査グループの一員で同大理学部の津金(つがね)達郎研究支援推進員によれば、上高地周辺の群発地震を詳細に見ると「誘発地震」が連鎖していると言う。
「上高地一帯の地下には、今回の地震から東西に延びる断層が6本以上あることがわかってきました。その中でまず、一番南の断層で地震が起こり、次にすぐ北にある断層での地震を誘発し、またさらに北の断層での地震を次々に誘発しています。それが短いスパンで起きており、各断層での余震が長く続く傾向もあるので、なかなか揺れが収まらないと考えています」
これらは大震災の予兆なのか。津金研究支援推進員は、6本の断層は長さ2~5キロ程度と比較的短いので巨大地震をもたらす心配はないだろうと見る。