そして、待望のディナーを憧れのダイニングカーで満喫、再びラウンジカーでくつろいでいるうちに青函トンネルが近づいてきた。実はちょっとしたこだわり(?)で、青函トンネル通過中にたっぷりと湯をためたバスタブに浸かってみたいと企んでいたのである。はたせるかな、それはその通りになったが、いまになれば、そんな経験はたぶん二度とできないのだろうなぁとも思う。
列車は快適な眠りを乗せて一路首都圏へ。最後尾から流れ去る車窓を満喫しつつ朝食を楽しむが、大宮駅に停車するや、ホームに並ぶ人々から一斉に視線が向けられたのには参った。こちらもこのあと新宿で列車を後に出勤である。どうか会社関係者に見つかりませんように……。
「夢空間」連結列車は、このあとも臨時特急「夢空間北斗星」や「夢空間北東北」などで体験する機会を得た。あるときは「あれ? 先だってもご利用なさってましたよね?」と笑顔で出迎えてくれた食堂車クルーと談笑したり、酔った勢いでラウンジカーのピアノを演奏してみたりと楽しい思い出となっている。別れあれば出会いもあり。鉄道の旅もまだまだ続くのであった。(文・植村 誠)
植村 誠(うえむら・まこと)/国内外を問わず、鉄道をはじめのりものを楽しむ旅をテーマに取材・執筆中。近年は東南アジアを重点的に散策している。主な著書に『ワンテーマ指さし会話韓国×鉄道』(情報センター出版局)、『ボートで東京湾を遊びつくす!』(情報センター出版局・共著)、『絶対この季節に乗りたい鉄道の旅』(東京書籍・共著)など。