東京都江東区にあるレストランアタゴールは「夢空間」が店の一部となっている(c)朝日新聞社
東京都江東区にあるレストランアタゴールは「夢空間」が店の一部となっている(c)朝日新聞社
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「夢空間」に乗車した際のきっぷ(写真/植村 誠)
「夢空間」に乗車した際のきっぷ(写真/植村 誠)

 JR東日本の超豪華編成として1編成3両のみが在籍していた「夢空間」。かの有名な「オリエント急行」をモチーフに1989年つくられたこの列車は、2008年の引退まで一般営業列車として走ったものの、運行実績はわずかにとどまり、幻の豪華列車とも呼ばれている。ありし日の姿を乗車ルポを交えて紹介してみよう。

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■バスタブつき寝台車やピアノつきラウンジなど、まさに夢の空間!

「えっ、キャンセルが出たんですかっ!?」

 思わず歓喜の声を挙げると、顔なじみの駅員が「ニヤリ」とした表情で切符を発券してくれた。「特急券・A寝台券」大人2名・56180円ナリ……。安月給の身にはいささか痛い出費だが、念願の1枚を入手した喜びに勝るものはない。

「北斗星トマムスキー号」──。1991年1月10日から横浜~トマムで運行をはじめた臨時特急列車で、人気を集めていたトマムへのスキー客をターゲットにした寝台列車である。しかし、私の目的はこの列車そのものにあった。通常の寝台車のほか、「夢空間」と名づけられた特別車両が連結されており、そのデビュー以来、いつか乗ってみたいと熱烈に思い続けていたのである。

「夢空間」は、上野~札幌を舞台に1988年3月にデビューした特急「北斗星」の好評を受けて、そのわずか数カ月後に計画が立ち上がった特別編成だ。「北斗星」は室内に専用シャワー室を持つA個室寝台「ロイヤル」や予約制フルコースディナーなどを提供する食堂車「グランシャリオ」など、従来の寝台列車とは一線を画す意匠で人気を呼んでいたが、その需要に応えつつ新たな発想による次世代の寝台列車の試作プロジェクトが始動したのであった。

「ロイヤル」など個室寝台車両は改造によって誕生していたが、「夢空間」は完全な新車として製作。先々の営業運転を見越しつつ、当面はその翌年(1989年)に開催される横浜博覧会のJR東日本ブースに出展することとなった。こうして、現行の「北斗星」も下敷きにしながらも、それまでに類のない編成が姿を現わすこととなったワケだ。落成したのは次の3両である。

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意表をつく設備やバーテンダーが常務するバー営業も