豆腐だけでなくナスや春雨の麻婆料理も人気です(イラスト/桔川伸)
豆腐だけでなくナスや春雨の麻婆料理も人気です(イラスト/桔川伸)

 ふだんはひらがなで書くことが多い飲食物の中には、意外な漢字表記のものがあります。また、使われている漢字の意味をひもとくと意外な由来にたどりつくものも。昔の人びとの暮らしぶりなどに思いを馳せてみましょう。

*  *  *

1.寒天
~寒い冬の空に心太をさらしてできた

 「寒天」の本来の意味は、文字通り「寒い日の空、冬の空」です。江戸時代に京都の旅館の主人が、屋外に放置した心太(ところてん)の変化を見て、心太を凍結後に脱水乾燥させた製品を考案。これが菓子の材料などになる寒天で、「心太の干物」として売り出したところ、評判になりました。「寒天」と呼ばれるようになったのは、隠元(いんげん)という僧が「寒ざらしのところてん」という意味を込めて「寒天」を用いたためといわれています。

2.牡丹鍋
~「獅子と牡丹」の組み合わせから「獅子」を「猪」に置き換えた

 イノシシの肉を使った鍋料理を牡丹鍋といいます。イノシシと牡丹は何か関係があるのでしょうか。古くから獅子と牡丹は組み合わせがよいとされ、絵画に描かれるなどしています。この獅子を猪(しし)に置き換え、さらに猪を牡丹というようになったといわれています。また、イノシシの肉の色が牡丹の花の色に似ていることに由来するという説もあります。

3.御強
~「強飯」の「強」に「御」をつけた

 赤飯などの、もち米を蒸したものです。歯応えがあることから、もともとは硬い飯という意味で「強飯(こわめし)」といいました。その省略形の「強」に接頭語の「御」をつけたのが「御強(おこわ)」です。このように、省略した言葉に接頭語の「お」をつけて丁寧にするなどした独特な言葉を女房詞(にょうぼうことば)といいます。室町時代ごろの宮中から広まった隠語のようなもので、「杓子(しゃくし)」の「しゃ」に「もじ」をつけた「しゃもじ」のようなつくりもあります。

4.銅鑼焼き
~打楽器の銅鑼に形が似ている

 漢字表記は馴染みが薄いかもしれませんが、「銅鑼焼き」と書きます。「銅鑼」は中国から伝わった円盤形の金属製の打楽器です。法会や船の出航の合図などに使われます。この楽器の形に似ていることが「銅鑼焼き」の名前の由来です。関西圏では、三笠山の上に映る満月や、三笠山の稜線に見立てて「三笠」とよばれるのが一般的です。

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キュウリやナスの漬物がなぜ「柴」漬け?