恋人の以前つきあっていた人、つまり「元カレ」「元カノ」の存在というのは、気になるものなのだろうか。漫画家の倉田真由美は「気になる」タイプらしく、過去にはこんな理不尽なことで彼氏に食ってかかったこともあるという。

*  *  *

 私も彼氏の元彼女のことで、怒ったりイラついたりしたことはある。一番記憶に残っているのは、20代の頃付き合っていた彼とのケンカだ。

 当時の彼は3歳年下の、ごく普通のサラリーマン。元彼女の話を聞いたのは、彼の部屋でゆったりくつろいでいた時である。

「へー、5歳下? じゃあ私より8歳も若いんだ」
「そうだね。オレの大学の後輩だから」
「どんな子だったの?」
「いや別に、普通だよ」

 しつこく聞きたがる私に、少し警戒心を見せる彼。

「いいじゃん、教えてよ。隠さなくてもいいでしょ」
「なんでそんなに知りたがるの? オレはあなたの元彼のことなんか、知りたくないけど」
「男はそうかもしれないけど、女は違うのよ。何でも知っておきたいの。ざっくりでいいから、教えてよ」

 撫で声で食い下がると、

「そんなに知りたいなら、見せようか? 写真」
「見たい! 見せて」

 のっそりと立ち上がった彼は、戸棚からアルバムを出してきた。

「ほら、この子だよ」

 彼が指さす先には、女子高生くらいにしか見えないショートカットの女の子がいた。

「スタイルいいね……」
「ああ、そうだね。胸はでかかったな」
「……」

 私は胸が大きいほうじゃない。しかも彼より年上だ。巨乳で年下とは、私とはまったく違う女じゃないか。

 納得いかなくて、不機嫌を彼にぶつけた。まさか私が機嫌を損ねるとは思っていなかった彼は慌てていろいろ言い訳していたが、私は「私と別れて若い巨乳と付き合えば!?」と理不尽な怒りをぶつけた。我ながら本当に、無茶なこと言ったと思う。

※週刊朝日 2012年2月24日号