二〇一〇年のバンクーバー五輪(カナダ)女子フィギュアスケート。この大会で唯一人、最高難度のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させながら、なぜ浅田真央は銀メダルに終わったのか。現地で取材したスポーツジャーナリスト・生島淳がこの疑問をきっかけに審査方法を検証し、勝利の戦略を著書『浅田真央はメイクを変え、キム・ヨナは電卓をたたく』で提案している。

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 著者は、芸術と競技の間で揺れ動いてきたフィギュア界の歴史を振り返り、現行の採点方法では難しい技が高く評価されないと指摘する。また、韓国のキム・ヨナが金メダルを取れた理由として、高得点が出やすいプログラムを作るコーチ、選曲から衣装、メイクまで考える振付師の重要性に着目。基礎的な事柄を中心に説明しながらも、フィギュア界を支える経済事情にも視野を広げて考察する。
 
 この本を読めば、浅田真央がバンクーバー五輪後、フリースケーティングの曲を新世代の振付師に依頼し、メイクを変えた理由も納得できる。二〇一四年のソチ五輪(ロシア)までのメダル獲得レースも、より一層楽しめそうだ。

(前部昌義)

※週刊朝日2012年2月24日号


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