石川幹人さん(撮影/写真部・掛祥葉子)
石川幹人さん(撮影/写真部・掛祥葉子)

※写真はイメージです(GettyImages)/大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします
※写真はイメージです(GettyImages)/大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします

「人間は進化したら何になるの?」
「どうして、“わたし”は“わたし”なの?」

 発想豊かな子どもの疑問に大学教授が本気で答える連載「子どもの疑問に学者が本気で答えます」。子どもに聞かれて答えられなかった疑問でも、幼い頃からずっと疑問に思っていることでも、何でもぜひお寄せください。明治大学教授の石川幹人さんが、答えてくれますよ。第20回の質問は「どうして、小さい子どもは「トウモコロシ」(トウモロコシ)、「おたかづけ」(おかたづけ)と言い間違うの?」です。

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【Q】どうして、小さい子どもは「トウモコロシ」(トウモロコシ)、「おたかづけ」(おかたづけ)と言い間違うの?

【A】言葉の音の順番を大事にしたため「言い間違い」とされるようになったのです

 私も小学生の頃、「メガネ屋さん」を「ネガメ屋さん」と言って家族によく笑われました。笑われるとくやしくて、「メガネもネガメも大して違わないやい」と、私は“負け惜しみ”を言っていました。

 この言い間違いには理由があって、近所のメガネ屋さんが看板の一部の横書き文字を、明治時代のように右から左に「ネガメ」と書いてあったのです。私はそれを見て「眼鏡はネガメだ」と覚えてしまったのでした。

 大人になって脳の勉強をすると、私の“負け惜しみ”には一理あると思うようになりました。脳で情報を一時的に保持する作業記憶は、それほど機能が高くありません。だから、「メガネ」も「ネガメ」も「ガメネ」も「メネガ」もみんな「眼鏡」のことにして、あまり音の順番にこだわらないほうが、脳の負荷が小さくていいのです。

 でも、そうすると「眼鏡」はいいけど、「時計」は問題です。「とけい」の順番が変わって「けいと(毛糸)」や「といけ(外池:人名)」になると別の意味と混同します。私たちの言語では、音の順番によって違う言葉にしています。そうしないと、言葉が足りなくなるのです。「とけい」の順番を変えると6つの異なる言葉ができるので、順番を気にして別々の意味を与えると6倍の新たな言葉として使えるわけです。

 ところが、順番を気にすれば、脳の負荷は高まるのです。それが言い間違いの発生原因になります。3つの音ならまだしも、5つの音で「けたかおづ」や、6つの音で「ロトシウコモ」となると、覚えて声に出すのがたいへんです。なぜならば、脳で情報を一時的に保持する作業記憶は、数秒で消えてしまうので、5つ以上の音を保ち続けるのがたいへんなのです。ひとつひとつを保ち続けられたとしても、それらの順番を覚えておくのはさらに負荷が高いのです。

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石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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