■19年発売の新薬でより血糖値を制御

 2019年9月、さらに優れた薬剤が登場した。注射薬のインスリンデグルデク/リラグルチドだ。すでに全国の医療機関で処方が可能になっている。持効型のインスリン製剤・インスリンデグルデクと、GLP-1受容体作動薬の一種・リラグルチドを一つにした配合剤である。

 この配合剤の臨床試験は2通りおこなわれた。経口薬による治療で十分な血糖コントロールが得られなかった患者を対象にした試験と、経口薬とインスリン製剤による治療でも十分な効果が得られなかった患者を対象にした試験である。

 どちらの試験でも、インスリンデグルデクやリラグルチドだけを使った場合より、この配合剤のほうが、過去2~3カ月の平均的な血糖の状態を示すヘモグロビンA1c値が明らかによく下がった。

 この臨床試験の一つを統括した綿田医師は、この配合剤の特徴を次のように述べている。
「持効型インスリン製剤の作用で一日を通して血糖値をコントロールし、毎食後など、血糖値が急上昇する恐れがあるタイミングでGLP-1受容体作動薬が効いて、血糖値上昇抑制に働くというしくみです」

 この配合剤は、食事に関係なく、1日1回、都合のよい時間に打てばよい。発売間もないため注射の用量を医師がチェックする必要があり、2020年9月までは14日処方に限られている。

「薬物療法で十分な効果が得られなかった患者さんなら誰でも、インスリン療法の最初からこの配合剤を処方してもらうことが可能です。早めにインスリン療法を検討してほしい」(綿田医師)

(文・近藤昭彦)

≪取材協力≫
東邦大学医療センター 大森病院 糖尿病・代謝・内分泌センター教授 弘世貴久医師
順天堂大学順天堂医院 糖尿病・内分泌内科科長 綿田裕孝医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より

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