東京五輪・パラリンピック開催には新型コロナだけでなく、大会開催費用の問題もある。
当初は予算7千億円で「世界一コンパクトな大会」を目指していたにもかかわらず、すでに1兆3500億円の費用が計上されている。東京都と組織委が各約6千億円、国が1500億円を負担。さらに会計検査院の指摘では、2013~18年度に大会経費に関連して国は約1兆600億円の支出をしているという。
そこに、数千億円とも言われる1年延期に伴う追加費用が上乗せされる。国際オリンピック委員会(IOC)は最大8億ドル(約856億円)を負担すると表明し、残りは都と国内スポンサー企業がかぶる。だが、コロナ対策で、約9千億円あった都の貯金「財政調整基金」は約9割減った。しかも、コロナ対策は今後も続く。
大手広告会社「電通」も頭を抱える。ある電通社員は言う。
「電通には東京オリンピック・パラリンピック局があり、100人くらいが配置されています。大スポンサーになると年間約100億円以上の契約をしていますが、今年12月で契約が切れる。今は必死になって契約延長の交渉をしていますが、なかなか難しい」
5月にNHKが国内スポンサー全78社に実施したアンケートによると、契約を「延長する」と回答したのはわずか12%。65%の企業が「決めていない」と回答した。
厳しい台所事情から、組織委は大会の簡素化で予算を圧縮しようとしている。これもIOCの反応が厳しい。元東京都職員で、東京五輪招致推進担当課長だった鈴木知幸氏(国士舘大学客員教授)は言う。
「(組織委の)森会長が開会式の縮小をIOCのバッハ会長に投げかけましたが、断られました。米テレビ局NBCから入る巨額の放映権料が減ってしまうからです」
NBCの放映権料は放映権料全体の約5割、IOC全収入の3割以上を占める。それほどNBCの影響力は大きい。
大会運営経費に使われるチケットの販売収入も見込みが立たない。延期が決まる前の東京五輪の販売チケット数は約780万枚。そのうち約448万枚を今年1月までに販売した。追加販売の時期は決まっていないが、IOCのバッハ会長は7月17日の会見で、コロナ対策として観客数削減を「シナリオの一つ」と発言した。また、1年延期となったため、組織委はチケット購入者が希望すれば、払い戻しにも対応しなければならない。チケット販売収入が当初予定より減ることは確実だ。