ダイエットの“原理原則”はシンプルなもので、「消費エネルギー>摂取エネルギー」だ。食事を減らして運動量を増やせば、太っている人は体重が減る。なのに、実践できないのはなぜなのだろうか。
朝日新聞医療記者の朽木誠一郎さん(34)は、最大117キロから150日かけて30キロ減量し、コロナ自粛中にさらに体を絞り、現在は70キロ、体脂肪率11%に。国立大学医学部を卒業後、医師にならずにメディア業界に進んだという経歴の持ち主だ。
新卒で入った会社が激務で、過度のストレスと過食により1年で40キロ以上も激増。同居していた彼女は「デブはタイプじゃない」と、一向にやせようとしない朽木さんに愛想を尽かして家を出てしまう。そこで、記者として仕事を兼ねて肥満のメカニズムや正しいダイエット方法を専門家に取材して実践し、記事を書くことに決めた。『最新科学を武器に40キロやせた 医療記者のダイエット』(KADOKAWA)はその集大成だ。
「ダイエット成否の鍵は意志ではありません。自分を取り巻く環境を少しずつ変えていくことが大切です」
もう一つ、重要な鍵がある。「時間選好率」という概念だ。行動経済学の考え方で、肥満者には忍耐強さがなく、将来健康になるという「未来の利益」よりも、いま食べたいという「目先の利益」を優先する傾向にあるという。
「僕がこの概念のことを知ったとき、自分がだめなんじゃなくて、世の中の無数の肥満者も同じことを考えていたのか!と驚きました」
ダイエットの原理原則である「消費エネルギー>摂取エネルギー」にしても、断食や単品ダイエットのような偏った食事でも摂取エネルギーは減らせるが、栄養不足で筋肉や基礎代謝が落ちるため、かえって健康を害し、体形を崩すことになりかねない。
太りにくい環境を整え、健康的に「消費エネルギー>摂取エネルギー」を実践するために重要な役割を果たすのが、栄養バランスや必要なエネルギー量、適切な有酸素運動や筋トレ法など、食事や運動に関する正しい知識だ。